漫画「そこをなんとか」

少年誌や青年誌で弁護士漫画をみることは多いですが、少女漫画で弁護士の仕事を扱った作品は珍しいと思います。「そこをなんとか」は、そんな少女漫画で弁護士を扱うという異色の漫画で、弁護士になればお金儲けができると踏んだ主人公が、実際には儲からない仕事ばかりを受けてしまい、それでも依頼人のために必死で働く姿を追った痛快な漫画です。2012年にはNHKにてテレビドラマ化もされました。

漫画「そこをなんとか」について

「そこをなんとか」は、2007年6月から白泉社の『MELODY』にて連載開始した麻生みことによる漫画です。片瀬小波が監修しています。単行本は同社の花とゆめコミックススペシャルレーベルにて、2013年5月までに8巻が刊行されています。2007年の司法制度改革により、司法修習修了者が急増したため、弁護士の就職難という事態が発生します。本作はその就職難民の一人、改世楽子を主人公です。楽子はかつてのバイト先の客であった菅原を頼って事務所に入所し、先輩弁護士の東海林弘明と弁護士として業務に当たります。主人公が新司法試験の合格者であることを始め、近年改正された法律など比較的新しい法知識が盛り込まれているのが特徴です。また、離婚に関する交渉や遺産の相続問題といった訴訟以外の弁護士の仕事が詳しく描かれているほか、国選弁護人や裁判員制度といった司法制度も扱っており、ドラマチックなだけでない弁護士の仕事を垣間見ることが出来ます。作品の題名は、楽子が依頼人のために食い下がって連発する「そこを何とか!」に因んでいます。

作者・麻生みことについて

麻生みことは、熊本県出身の漫画家です。1990年、麻生美琴の名義で応募した「TWINS」で第15回白泉社アテナ新人大賞新人賞を受賞しました。1991年、同作品が「LaLa DX」に掲載され漫画家デビューを果たしました。以後、「LaLa DX」や「MELODY」など白泉社の漫画雑誌で活躍しています。代表作は「天然素材でいこう。」「GO!ヒロミGO!」などです。「MELODY」2007年6月号より、「そこをなんとか」を連載開始、2012年10月から12月と2014年8月から9月にはNHK-BSプレミアムにてテレビドラマ化もされました。また、同誌で毎号一本の映画について絵と文で語る1ページコラム「麻生みことのよりみちシネマ」も連載中です。2012年からは「good!アフタヌーン」にて「海月と私」を連載開始しています。

あらすじ

貧乏な家に育った主人公・改世楽子は、金儲けのために弁護士になることを決意し、苦学の末司法試験に合格します。無事に弁護士になり、これで楽に金儲けが出来る!と喜んでいた楽子でしたが、今の時代は弁護士の世界にも就職難の波が押し寄せていました。金儲けが一番の関心事の楽子は、以前キャバクラでバイトをしていた時に知り合った零細事務所の所長に半ば強引に頼み込んで雇ってもらいます。楽子はそこで、ちょっと嫌味ながらもバリバリと働く先輩弁護士・東海林弘明に毎日怒られながらも、何とか弁護士として働けることに。しかし事務所に舞い込んでくるのはお金にならない小さな仕事ばかり。それでも楽子はお金のためと、必死に仕事をこなしていきます。しかし事件に関わるうちに、楽子は依頼人のために損得を忘れて奔走するようになります。失敗を重ねながらも、楽子は一人前の弁護士に成長していくのでした。

登場人物

改世 楽子(かいせ らくこ)

本作の主人公で、25歳の新米弁護士です。九州出身で通称は「らっこ」です。司法制度改革による新司法試験の初年度の合格者であり、新第60期の司法修習生として司法修習を受けました。酒量は底なしで、学生時代にキャバクラでアルバイトしており、その時の客だった菅原に「もし他に就職先が決まらなかったら雇う」とこを賭けた飲み比べで勝利。それを理由に菅原弁護士事務所に押し掛け、採用してもらいました。実家が貧乏で、「文系が得意なら弁護士におなり」という親の助言を真に受けて法曹界を志しました。弁護士として大金を稼ぐことを夢見ていますが、小さな事務所での下働きばかりなことと、弁護を引き受けてもなぜか高確率で依頼料が安く落ち着いてしまうことから、理想とは少々違う現実を歩みつつあります。性格は天真爛漫でどこか呑気です。菅原に言わせると「苦労人なのにスレてない」のだそうです。無邪気に堂々と金持ちの夢を語る一方で、依頼人の窮状に肩入れして金にならない労働をしたりと、基本的に人情派です。また、キャバクラ勤めの経歴などでもわかる通り、ちゃっかりしていて弁護士らしい堅苦しさや迫力とは無縁の性格をしています。そのため依頼人からは「あなたが弁護士?」と疑問の目を向けられることもあります。

東海林 弘明(しょうじ ひろあき)

菅原弁護士事務所の弁護士で、楽子の先輩です。クールでビジネスライクな性格。人情に流されがちな所長を抑えて事務所の屋台骨を支えています。仕事面では超有能で、依頼人に不利な状況をひっくり返したり、依頼人を丸め込んでより多くの依頼料を引き出したりしています。そのあまりにも抜け目のない仕事ぶりで楽子を唖然とさせることもしばしば。楽子を苦手なタイプとしており、楽子が事務所に押し掛けた当初は追い返そうとしました。厳しいですが的確なフォローで楽子を指導してくれます。名門私立・聖応大学の出身で、大学在学中に司法試験に受かるなど、かつてはエリート街道を突っ走っていました。一旦は大手弁護士事務所に就職しますが、その直後トラブルに遭って退職。頼っていった恩師の菅原に誘われ、彼が開く事務所で弁護士生活をスタートさせました。第21話では中道に誘われて別の事務所へと移籍しています。

菅原 耕太郎(すがわら こうたろう)

菅原弁護士事務所の所長です。温厚な人格者ですが、依頼人に情で押されて依頼料を値切られることも多いです。そのため事務所ではしっかり者の東海林が幅を利かせ、彼自身は所長であるにも関わらず普段は少々存在感が薄くなっています。かつて聖応大学の法学部で教鞭をとっており、東海林も彼の教え子でした。現在も別の私立大学で客員教授を務めています。司法試験に合格せずに弁護士となった異色の経歴の持ち主です。

久保田 亜紀(くぼた あき)

菅原弁護士事務所の事務員です。常に無表情で淡々と仕事をこなします。かつては菅原の教え子だったのですが、大学在学中に交際中だった男性の子供を妊娠。しかし結婚することができず、未婚のまま息子の昴を出産し、シングルマザーとして働きながら育児を続けています。家庭では事務所とは全く違う一面を見せています。

中道 志織(なかどう しおり)

東海林の司法修習の同期の女性弁護士で、大手である奥山・城之内弁護士事務所に所属しています。企業の担当をしており、度々楽子の扱う案件の相手方の弁護士としても登場しています。その後、大手の事務所なりの苦労に嫌気がさし、障子を誘って別の事務所へと移籍しました。かつては東海林の恋人でした。

赤星 光貴(あかぼし こうき)

楽子の司法修習同期で、奥山・城之内弁護士事務所に所属しています。お金持ちのエリートです。楽子に気があり、「合コンの下見」と称して食事を奢るなどさりげなくアプローチしていますが、楽子は全く気が付いていません。

ドラマ版「そこをなんとか」

ドラマ版「そこをなんとか」は、NHK BSプレミアムで2012年10月21日より12月16日まで毎週日曜日22時~22時49分に放送されていました。全9話で、主演は本仮屋ユイカが務めました。2014年8月には、この作品の第2シーズン「そこをなんとか2」の放送も予定されています。

キャスト

  • 改世楽子・・・本仮屋ユイカ
  • 東海林弘明・・・市川猿之助
  • 久保田亜紀・・・MEGUMI
  • 菅原耕太郎・・・大友康平
  • 赤星光貴・・・五十嵐隼士
  • 中道志織・・・井上和香

スタッフ

  • 原作・・・麻生みこと「そこをなんとか」
  • 脚本・・・今井雅子、横田理恵
  • 音楽・・・遠藤幹雄
  • 主題歌・・・プリシラ・アーン「アイル・ビー・ヒア」
  • 演出・・・片岡敬司、一色隆司
  • メインタイトル語り・・・小林克也
  • 法律考証・・・片瀬小波
  • 弁護士指導・・・野元学二、牧山美香
  • 医事考証・・・和井内英樹
  • 産科指導・・・三枝義人
  • ヨガ指導・・・青山英子
  • ラグビー指導・・・秋葉朋幸
  • ダンス指導・・・KAICHOU
  • 大阪ことば指導・・・井上裕季子
  • 擬闘・・・髙橋昌志、新実
  • 制作統括・・・後藤高久、谷口卓敬

感想

少女漫画で弁護士を描いた作品は、あまりありませんよね。この漫画は、貧乏な主人公が金儲けのために弁護士になるという設定も面白く、明るく楽しく読めるので、法律に親しみやすいという点が良い所だと思います。しかも日々変わっていく法律を最新の状態で描いてくれているので、とても勉強になります。弁護士というと、スーツをびしっときて、高そうなネクタイを締め、裁判所で「異議あり!」とかっこよく言い放つ姿を思い浮かべますが、そんな弁護士はごく一部で、本当はこの物語の主人公のように、地味でお金にならない仕事をコツコツとこなしているのだというのが新鮮でした。弁護士が普段どのように過ごしているのかが分かる、リアルな漫画だと思います。ドラマの方も大変面白かったです。漫画の世界観を壊さない絶妙なキャスティングと、きちんと取材して書かれたことが分かる脚本で、ちょっと笑えて心温まるストーリーとなっていました。来月からは新シリーズも始まるということで、今からとても楽しみです。

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